MALDI-TOF MSによる迅速微生物同定において課題であったデータベースの拡充を,組織されたMALDI-TOF MS微生物同定コンソーシアムでのインハウスデータの共有化を行うことで解決し,格段にヒット率が向上させた。食品工場や原料から分離された野生株の同定において,細胞外多糖等に起因する抽出率の低さが原因で同定出来ない場合には物理的破砕であるビーズ破砕により抽出率を上げることでヒット率が向上することが出来た。また,MALDI-TOF MS微生物同定コンソーシアムでは固体培地上に生育した糸状菌について同定するためのデータベースの構築も行っており,今後食品産業での利用の拡大することが期待される。更に,九産大で構築したプログラムにより16SrDNAをターゲットとした塩基配列解析や従来のMALDI-TOF MSの同定システムでは困難であった近縁種識別や菌株識別の可能性が見えてきたことから,食品産業だけでなく医療分野での院内感染の原因究明等への応用も期待される。