今後,想定される南海トラフ大地震のような大規模災害では,被災者は長期間にわたる避難所生活を強いられる。避難所生活では,食に関わるさまざまな問題が発生する。その中でも,食品衛生は非常に重要で,衛生状態が悪化すると食中毒などの体調不良を起し,大規模な二次災害になり兼ねない。そこで,避難所での衛生状態が悪化すると,食中毒のリスクが高まることに注目し,調理の仕方,手洗い方法や食材の取り扱いについて教育を行い,食中毒を防ぐための衛生管理を徹底するなど,これまでの災害時の取り組みを基に解説した。また,食中毒事故の報告事例があまりに少ない理由に触れ,食中毒防止対策には,過去の情報収集機能を強化し,広く公開することが必要であることを述べた。最後に,災害関連死の低減策として,高齢者を含む「要配慮者」への食のリスクについても提言した。