著者はこれまでにレジオネラの検出と制御に関する研究に取り組んできた。レジオネラの平板培養検査時の夾雑微生物汚染を低減させるために前処理用の酸性緩衝液の改良,選択培地の開発を進めた。次に,レジオネラの迅速検査法として遺伝子検査法を検討し,浴槽水において遺伝子検査が有効に活用できる可能性を示した。平板培養法と遺伝子検査法の結果の相違を考察するために,冷却水と浴槽水のレジオネラの多様性を調査し,浴槽水と比較して冷却水の多様性が高いことを明らかにした。そして,冷却水からアメーバ共培養法でレジオネラを検出し,VBNCレジオネラの存在を示した。また,様々な環境水のレジオネラ汚染実態を調査し,冷却塔で使用する殺菌剤の種類ごとに検出率を調べ,レジオネラに対する塩素剤の殺菌効果について評価した。レジオネラ対策には精度の高い検査技術と有効なレジオネラの処理技術の両方が必要である。本研究で得られた知見が今後のレジオネラ対策に少しでも役立つことを期待してやまない。